
懐かしい匙がでてきました。
飾り匙。懐かしいといっても9年ほど前のものです。
しばらく実用的なカトラリーを作ることに注力していたので、すっかり存在を忘れていました。お蔵入りにしていた段ボールの中から出てきたときは、いろいろ試行錯誤していた時の記憶がぶわっとよみがえって、しばらく懐かしんでいました。
荒々しさを出したくて、わざと漆を塗り重ねずに仕上げました。予想より完成度が低くて悩んだものです。でもまた、こういうのを作ってもいいなあ。
作った当時、オイルフィニッシュという仕上げにまだなじみがなくて、漆仕上げのものをいろいろと作っていたのです。独立して制作を続けていくにあたって、特別なセンスもとびぬけた技術もなくて、どうしたら一人でやっていけるのだろうと考えながらやみくもに作ったものだったかもしれません。民藝、アフリカンアート、ペザントアート(農民芸術)いろんなものに感化されていて、まねごとをやってみるのですが思うようにいかなくて、中途半端なものばかりつくって悩んでいたのを思い出します。
日本の匙は簡素なものが多いですが、アフリカンアートやペザントアートは個性的な造形や彫刻が多いです。ですが、よけいな作為を(私は)あまり感じません。たぶん生活の中から必要に応じて生まれたものだからなのだと思います。自分たちが使うくらしの道具を楽しんで時間をかけてつくっているのが伝わってきます。粗野なものもあるけど、雑ではない。
自分でつかうものを自分でつくるというと現代ではDIYなのでしょうが、よくあるDIYと違うのは、徹底的に手間暇かけてつくられているということではないでしょうか。(まれにとんでもなくこだわりぬいたものを作っている人もいますけど)
自分が使うものを丹念につくる。それだけで、出来上がったものはとても美しいのだと思います。以前、スプーンや菓子楊枝づくりのワークショップをしたときも、同じことを思いました。てらいのない形、人それぞれの形だからこそいい。
売り物をつくっている身としては、手間ばかりかけてはいられなくて、無垢なものにはかなわないなあと感じます。
いろいろまねごとをやってみたなかで、今のカトラリーづくりがなんとか続いているのは、自分の生活の中で使いたいもの、使ってほしいものを作っているからなのだと思います。自分や家族や周りの人が使ってくれるものを丁寧につくる、ということを続けていきたい。(なかなか地元の山形で販売できていないのだけど、、、この先の売り方を考えています)
飾り匙は、縁起物として飾るだけでもありですが、おかずを取り分けたりとちゃんと使えます。当時作った分の半分は旅立っていったように記憶しています。どこかの家庭で使われていますように。
まとまりがなくなってしまったけど、懐かしい匙をみて、忘れていたことを思い出したり、再発見できました。
8月に急きょ展示会に参加させていただくことになりましたので、そちらに出展しようかな。
後日詳細を告知いたします。